車載用のLED点灯回路について記載します。
はじめに
車載照明をLED化されている皆様は、以下のような経験がないでしょうか。
- 突然LEDが点滅しだした
- 突然LEDが切れた
- 突然LEDが暗くなった
自動車は劣悪な環境のため、LEDの仕様を守っていた場合でもこの様なことが起きてしまいます。
ここではこのような問題に対応できるLED点灯回路について記載します。念のため補足しますが、ここに記載する内容は 一般的な鉛蓄電池バッテリー と 一般的なオルタネータを搭載した12V仕様の自動車 の話に限ります。
一般的なLED点灯回路の注意点
まずはGoogle先生に聞くと教えてくれるLED点灯回路が以下です。
電圧も電流も守っていて、回路的には正しいです。しかし自動車の場合、この回路が必ずしも正しいとは限りません。この回路と同じ電源に繋がる他の機器によってはLEDが破壊されてしまう可能性があるのです。
代表的な例として、電源にリレーやモータ、発電機等が繋がっている場合です。リレーやモータ等が繋がっている場合、その中の コイルによって予想外の電圧が発生します。
コイルはOFF時にその両端に電源の何10倍もの逆方向電圧が発生するのです。これを 逆起電力(=サージ) といい、この回路では逆起電力に耐えられません。
逆起電力についての詳しい情報は [SGDK後藤操車場さん] の [逆起電力って?] が参考になります。
もうひとつはバッテリ接続時やスイッチオン時に発生する突入電流(=インラッシュ、ラッシュカレント)です。これは電子機器の電源回路等に実装されているコンデンサの充電時に発生します。
但しこれはLEDの点灯回路の都合上ほとんど問題にならないので省略します
さらにもうひとつ、ロードダンプパルス というものがあります。これはオルタネータがバッテリを充電している状態でバッテリが接触不良になった場合に発生します。
この電圧の大きさはオルタネータの仕様に依存しますが、100Vを超える場合があります。
自動車で耐えられるLED点灯回路の例
上記の回路には電源電圧と逆方向にショットキバリヤダイオードが入っています。また、電源からGNDにツェナーダイオードが入っています。これらの役目を次に説明します。
ショットキバリヤダイオードの役目
ショットキの役目は 逆起電力が発生したときショートし、その電流を逃がします。
これによってLEDには意図しない逆方向電圧が印加されない仕組みです。このようなダイオードの使い方を、巷では 逆起電力防止ダイオード と呼んだりするようです。
ちょっと勘の良い方はこんなことが気になると思います。
「ショート電流でショットキバリヤダイオードが破壊されるんじゃないの?」
実はその心配は不要です。ショート電流はコイルに溜まっていた電流しか流れないからです。つまりコイルの動作電流分だけしか流れませんし、他の接続機器も同時に吸収してくれます。
なので、このダイオードは1Aもあれば十分だと思われます。(オルタネータにLEDを直結とかだとダメかもしれませんが)。
ツェナーダイオードの役目
ツェナーの役目は、なんらかの理由で 想定以上の電圧が発生したときショートし、その電流を逃がします。
これによってLEDに意図しない高電圧が印加されないようになります。ショットキと同じく、ショートした際には少しの電流しか流れません。
微点灯(ゴースト点灯)する場合の対策
自動車のランプ点灯回路によっては スイッチがOFF時も弱電流が流れる場合があります。これはFET等によってOFFされていて、回路的には切断されていない場合などがあります。
例えば以下のような調光式回路の「LAMP」部分をLEDに変えた場合に起きることが多いようです。
この回路の場合、ゲートーソース間の漏れ電流によって微点灯してしまいます。
スズキなどの安い車 一部の車はこのような回路になっているようです。コスト削減のためかもしれません。
この場合の微点灯を防ぐためには以下のような回路を追加します。
尚、回路図中のON/OFF-SWの部分をPWMと読み替えてください。
回路図中のツェナーダイオードの定格電圧は、漏れて来る電圧より高く設定します。これは漏れ電流をカットできればいいだけの存在です。
また、通常の調光式ランプ点灯回路は以下のようになっています。
この回路の「LAMP」部分をLEDに替えた場合、通常は微点灯しないはずですが、稀にこの回路でも微点灯する場合もあります。
それは、例えばゲートーソース間のインピーダンスが低い場合(通常そんなことはない)と、他の照明回路等の入力側インピーダンスが低くて電流が漏れてくる場合などです。
エンジンON時とOFF時で明るさが違うのが気になる場合
ここまでに紹介した回路は、バッテリー電圧によってLEDへ流れる電流が決まります。従ってバッテリーの電圧降下時やオルタネータの充電時では電圧が2vから4v近く違うため、LEDの輝度も変動します。(場合によってはチラつく)
これが嫌で、オルタネータの動作に関わらず明るさを常に一定に保ちたい場合は 「CRD」、「レギュレータ」、「DC/DCコンバータ」などの点灯回路を使えばよいです。
以下よりこれらの回路と説明を記載します。
CRD(定電流ダイオード)によるLED点灯回路
CRD(定電流ダイオード)を使ってしまえば話は早いです。回路もすごく簡単に済みます。以下を参照ください。
上記回路ではCRDを並列接続しています。(CRDは並列接続が可能です) これにより約60mAを安定的に供給することができます。
但し注意点があります。CRDには定格電力があります。これを超えるとCRDが燃え尽きてしまいます。
CRDで発生する電力は以下の式で求められます。
CRDの電力 = CRDにかかる電圧 * CRDから流れる電流
上記の式で算出されるCRDの電力は、そのまま熱になります。よってCRDの性能ギリギリで使うのは望ましくありません。
可能であれば1/3から1/4くらいの電力で使うのが理想です。それくらいであれば空気中に熱が自然放熱されるでしょう。
また、並べて使用する場合も熱に注意しなければなりません。並べれば並べるほど対流が悪くなって熱がこもってしまいます。
レギュレータによるLED点灯回路
前述のCRDによるLED点灯回路を使う場合、取り出せる電流が少ない問題があります。LEDを大量に並べたり、パワーLEDを点灯するには向いていません。
この問題はレギュレータを使うことで解決できる場合があります。レギュレータは定電圧回路そのもので、入力電圧より低い電圧の範囲で安定させます。
上記の回路は 12vのレギュレータを使用しています。12v以下になる場合どうなってしまうかはレギュレータの仕様に依存するので注意が必要です。
これが問題となる場合は 9vのレギュレータを使用するといいでしょう。(但しLEDの直列接続数を減らしたり、抵抗値を変更して9vの点灯回路にしなければなりません)
また、レギュレータにはドロップアウト電圧があり、出力電圧に対して+1v程度の入力電圧が必要だったりします。
そしてレギュレータも熱を出すので、大量に電流を消費する場合は放熱が必要です。
調光式ランプをLED化する場合においては、以下のような回路だとレギュレータが使用できません。
これは入力電圧がパルスであるため、レギュレータの応答がおいつかないためです。
しかし以下の調光式の点灯回路なら使用できます。
上記の場合はレギュレータの入力電圧はパルスではないためです。
ただしGND側が高速でON/OFFするため、レギュレータのGND端子は別の場所に落とす必要があります。
尚、レギュレータを使う場合の微点灯対策は不要です。
また、レギュレータの入力段に入っているツェナーダイオードはサージサプレス目的です。
DC/DCコンバータによるLED点灯回路
ものによって仕様が異なりすぎるので、一般的な回路はありません。
使い方はレギュレータと同じような場合が多いです。
そしてこれまで述べた回路のどれよりも効率がよい場合が多いです。
ネックは大抵の場合値段が高いことです。
とりあえず今日はここまで。
車査定